小悪魔な幼なじみ
「しずくー!
どこ行ってたの?
消えちゃったから心配したじゃんかー!」
教室に戻ると席には梢がいて。
「……ごめん。
ちょっとトイレ行ってたの」
言えるワケがなかった。
廉に好きだ、って言われた、なんて。
「ふ~ん そうなんだ。
でさ、雫。
顔、真っ赤だよ?」
「ま、真っ赤じゃないよ!」
慌てて両頬を両手で隠した。
熱をもった自分の手。
廉の手は…冷たかったな…
なんて考えてるあたしがいて。
バ、バカじゃん…あたし。
何さっきのこと、思い出してるんだろう。
必死で保健室でのことを忘れようとした。
でも、無理だった。
頬に当てられた冷たい手。
廉の大きな目。
筋の通った鼻。
カタチの整った唇。
何もかもが頭に張り付いて。
それをぬぐい去るのが無理だということをあたしは知っている。
なぜなら前にも同じことがあったからだ。
それは今から数年前。
あたしと廉がまだ小学4年生だったときのこと――……