小悪魔な幼なじみ
「………ね、雫?」
あたしを抱きしめたままの状態で廉が言う。
「前に俺が保健室で言ったこと…覚えてる?」
「……………そんなの、忘れた。
とっくの昔にね」
覚えてるけど、
絶対に言わない。
だいたいあんなの…忘れられるワケがないでしょ?
「そっか。
じゃあいいんだ。
ただ…言いたかっただけだから。
俺の気持ちは…これっぽっちも変わってないよ、って。
じゃあ着替えて部活行くから、またあとで」
廉はそう言ってあたしから離れると音楽室を出て行った。
「…………なんなの」
ホント、自分勝手だよ。
そうやって廉の言った一言で、
あたしはいつも振り回されるんだ。
そういうとこ…ホント、ムカつく。
あたしは両頬をパシッと手で挟むと気合いを入れ直す。
今から…部活なんだ。
廉のあの言葉は忘れよう。
うん、忘れた方がいい。
だって…そうじゃないといろいろと支障が出ちゃうでしょ?