小悪魔な幼なじみ
「……ちゃん、雫ちゃん!」
肩を揺さぶられ、夢の中から現実へと戻ってくる。
「……あぁ、竜馬くん」
頭がぼーっとする中、なんとか目を開ける。
うん、まだ全然眠い。
「あと5分で授業始まるよ」
「え?もうそんな時間?
起こしてくれてありがとね!」
なんて優しいんだろう、竜馬くんは。
きっと廉だったら絶対放置されてた。
「ってまだ、廉…弾いてるの?」
相変わらず聞こえてくるピアノの音色。
多分…これ、即興で作ってる。
今まで1度も聞いたことのない音符の並びだもん。
「雫ちゃんが寝てからもずっと聞こえてたよ」
まったく…廉は困ったヤツだ。
「あたし、音楽室に寄ってから教室戻るね」
竜馬くんの横を通り過ぎて音楽室のドアの前に立つ。
どうせ、廉のことだ。
時計なんて見てないだろう。
このまま、ほって置いたら廉は授業に遅刻だ。
仕方ないから気づかせてあげる。
胸の中で長い独り言を呟き、音楽室のドアを開けた。