小悪魔な幼なじみ
「雫?ホントに?」
「うん、ホント」
「廉が雫ちゃんにキス…?」
「うん、されたよ」
ハンドルを握るお父さんは溜め息をついて
後部座席に座る誠司おじさんはお父さんに
「どうもすいません…」
なんて謝ってて。
あのときはなんで謝ってるんだろう、って思ってたけど今なら分かるよ。
うちのバカ息子がとんでもないことをしてしまって…
って意味でしょ?
「いや~廉くんは将来とんでもない男になりそうですね」
お父さんが誠司おじさんにそう言いながら魂の抜けたような笑い方をして。
ま、娘を持つお父さんなら誰でもそうなるよね。
自分の娘のファーストキスが幼なじみに奪われたら、
どのお父さんでもショックを受けるだろう。
特にうちはお父さんがあたしに向ける愛情が尋常じゃないからね。
自分でも言うのもなんだけど。
「………しずくー?
そろそろ現実に戻ってきてもらってもいいっすか?」
ハッと我に返ると目の前にドアップで梢の顔が現れて。
「ち、近いっ!!」
思わず顔を背けた。