小悪魔な幼なじみ
「そう言わずにさ、旅行…行こうよ、雫。
部活、ないんだろ?」
「……そうだけど…」
去年のゴールデンウィークは部活があった。
でも今年はなぜか全部休み。
ウワサによると顧問が結婚したばかりで新婚旅行に行くとか…
「ほら!だったらいいだろ?」
「ヤだ」
「じゃあ雫が行かないならお父さんも残るぞ」
「それもヤだ」
「ん…?ちょっとショックなんだけど…」
お父さんのリアクションに思わずクスッと笑うあたし。
マズイ、マズイ。
これはお父さんの作戦だ。
笑わかせて、気が抜けたところでズッと懐に入ってくる。
前にもその作戦でYESと言っちゃったことがあるんだ。
表情を引き締め、また背中を押す。
「しずく~
旅行行こうぜ~」
「ヤだ!絶対ヤだ!」
と、そこへこんな怒声が飛んできた。
「いつまでそんなこと言い合ってるの!
雫!もう中学生なんだから我が儘言わないの!
旅行、みんなで行くの!
分かった?!?!」