心の色
死の予感
 ここ数日の間、
タケシの体に異変が
あらわれていました。
ひどくせき込み、
体中に発疹が多く出てきたのです。
案の定、医者からエイズへの
発症を言い渡されました。
タケシの中には、
死の予感が浮かんでいました。

“ここでカオリさんと、
寄りを戻したら、
カオリを悲しませるだけだ。”

その思いから、
タケシはカオリへの思いを
このまま断ち切る
しかなかったのです。
ついに、タケシは
入院する事に、というのも、
入院せざるを得ない程
衰弱していたのです。
エイズの症状で、
免疫力のないタケシは、
みるみる内にやせ細っていき、
ついには、悪性の腫瘍まで
発見されてしまいました。

「俺、もう死ぬんだな…。」

病室でふと、そう考える日々、
そんな自分の死を自覚した今、
思い残す事といえば、
やはりカオリの事でした。

 タケシは、もはや、
まともに歩く事もままならない程、
衰弱していました。
そんな状態です。
外出できるか医師に尋ねましたが、
勿論禁止されました。
タケシは悩みに悩み、
悩み続けました。

「時間が無いんだ…、
俺はもう死ぬ…時間が無い…。」

死が迫る恐怖からか、
そう独り言を呟く事が
しばし見られました。
医師や看護婦達、
祖母のカズヨまでもが話をかけても、
反応が薄く、精神的におかしく
なってしまったのかと、
周りは思うようになっていました。

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