心の色
死んでおらず、
生きていたどころか、
盲目の目が治っていた
カオリは、訳が
分かりませんでした。
とはいえ、すべてが
初めて目にする物です。
目が見えるという事に、
素直に感動する
しかありません。

「なんて綺麗なの…。」

カオリは、窓から
身を乗り出し、
木々や山の風景に
見とれました。
そこへ、飲み物を
買いに出ていた、
カオリの母マリコが
部屋へ帰って来ました。

「カオリ…?目が覚めたの?」

マリコは、恐る恐る
カオリの目の前へと近寄りました。

「見えるの?」

「うん…これってどういう事?」

その問いに答える前に、
マリコはカオリを
抱き締めました。

「良かったね、
見えるのね、カオリ…。」

マリコは涙を流して
喜びました。しかし、
なぜ目が見えるのか、
なぜ生きているのか、
訳の分からないカオリは、
素直に喜ぶ事は出来ません。

「そうね、ちゃんと
説明しなきゃならないわね。」

マリコはそう言って、
カオリをやさしく、
ベッドの上に座らせると、
自分もその隣に座りました。

「残念だけど、タケシ君は、
亡くなったの。」

カオリはそれを
聞いて、顔を覆いました。
そして、声をあげて
泣き崩れました。

「どうしてっ、どうしてっ。
一緒に死ぬ筈なのにっ、
私だけ生きてるのっ?」

マリコは、カオリの
背中を易しくさすりながら、
説明を始めました。
 カオリはなぜ
生きているのか、
そして、なぜ目が見えるのか、
その真実を
マリコから聞かされ、
カオリは驚愕しました。

「タケシ君…。」

しばらくの間、タケシの事を
思い、涙が止まりませんでした。
カオリが目覚めたのは
二日ぶりでした。
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