秘密の誘惑
お昼休みになった。


「萌さん、食事をしてきてちょうだい」


裕美が書類から顔を上げずに言う。


「柏木さんは?」


「ディーンに頼まれた書類を仕上げなければならないから先に行ってきて、そうだわ、帰りにコンビニによってくれる?サンドイッチと牛乳を買ってきてくれるかしら?」


「は、はい もちろんです」


そんなに忙しいのにあたしが出てしまってもいいのかな?


戸惑っていると裕美が顔を上げた。


「いいのよ?貴方にやってもらえる仕事じゃないから」


その言葉は萌を傷つけた。


もちろん何も知らない新人だ。


秘書の事などまったく勉強をした事のない萌だから仕方がないが、裕美の棘のある言葉に滅入りそうになる。


< 114 / 404 >

この作品をシェア

pagetop