秘密の誘惑
「熱はないな でも萌、顔が赤いよ」


萌の額に手を置いた千波が言う。


「な、なんでもないよ 千波兄 ケーキ置いてくる」


萌は日菜を追ってキッチンへ入った。



「萌、ここはいいから千波くんの方へ行ってなよ」


日菜がお皿にサラダを盛り付けながら言う。


「て、手伝うから 手伝う」


ケーキの箱を大理石の台に置いて萌は流しで手を洗った。


「じゃあ、プチトマトをサラダに盛り付けて」


日菜に命令されるのがこんなにうれしいものだとは思わなかった。


キッチンにいる間に平常心を取り戻さなければ。


心臓が大きな音をたてて暴れていた。




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