秘密の誘惑
「可笑しかったのはそのあとなの、ディーンのスラックスはキャンディーでべとべとになっちゃったからもう一度部屋に戻ったの あの時のカーティスさんの渋い顔を思い出して可笑しくなっちゃったの 会議の時間が迫っていたから」



ディーンは急ぐ風もなくクローゼットにかけられたスーツを選んでいたけれど、時間がないとばかりにカーティスさんは時計ばかり気にしていた。



「あの人、滅多に表情を変えないわよね?」



「そうそう、見本のような完璧な秘書なの」



「ディーンさんは子供が好きなんだね」


「千波兄も子供好きでしょ」


と言ってから、しまったと言う顔になる。



結婚してから8年経っているのに子供が出来ないからだ。


周りの者はなるべく言わないように気を使っていた。


「やだ、萌ったら 何、気にしてるのっ?」


日菜がにっこり笑って気まずそうな萌に言った。



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