秘密の誘惑
「ディーン、出てっ 出てよう」


呼び出し音が鳴り続けるばかりでそのうち留守電に変わる。



留守電に話せる内容ではない。



自分でも何を言ったらよいのか分からないのだから。



萌は力なく携帯電話を下に降ろした。



手の中から携帯電話が滑り落ち床に転がった。




部屋がノックされてドアを振り返る。



「は・・・い・・・?」



入って来たのは母だ。



トレーの上にサンドイッチとホットミルクが入ったカップ。



「お昼食べていないんでしょう?しっかり食べないと胃に悪いわよ?」



机の上にトレーを置き言う。



「ありがとう 食べたら少し休むね」



きっと酷い顔をしているに違いない。



目と目を合わさずに言った。



< 353 / 404 >

この作品をシェア

pagetop