秘密の誘惑
ディーンを乗せた車はゆっくりと辺りをうかがう様に速度を落として走行していた。



「この辺は危ないですよ」



ホテルの運転手が言う。



「知っている しかし萌を探さなければ」



どうかこの近くにいて欲しい。



タマラが何を企んでいるのかわからないが、手がかりはメモに書かれていた墓地だけだ。



* * * * * *



車が近づいてくるのが垣根の隅に身を隠した萌にも分かった。



さっきまでは車が通らないかなと思っていたが、やはり見知らぬ人の車を止めるのは不安だ。



車はゆっくり萌が隠れた垣根の横を通って行った。



何でゆっくりなんだろう・・・・・・?


萌の横を通り過ぎたディーンを乗せた車は墓地へとやって来た。



車を降りて辺りを見渡す。



萌の姿は無かった。



落胆と絶望がディーンを襲う。



本当にここへ着たのか?



門はぴったりと閉められている。



閉められていなくても1人で中へは入らないだろう。



ディーンはポケットから携帯電話を取り出しタマラへかける。



しかしつながらない。



くそっ!



携帯電話を地面に投げつけようとした時、携帯電話が振動した。



「なんだ!?」



かけてきたのがカーティスだと知ってディーンは噛み付くように出た。



『ディーン様、萌様は?』


カーティスの声はいつもより冷静さが失われているように聞こえた。



「まだ見つからない!市警へ探すように言ってくれ」



『わかりました』



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