純情恋心
『――……で、待っているって訳か』
「うん……」
毎日教室で高遠先輩を待つあたしに付き合ってくれている千歳は、あたしの異変に気付いたらしい。
『なるほどね、なんか様子が変だと思ったらまぁなんというか……それで、那智はいいの?』
頬杖をついて、明らかに呆れたような表情でそう問いかけてきた。
「よくはないけど、だってしょうがないじゃん、あたしが悪いんだし……」
あたしが勝手に行ったのが悪い、だから少しくらい変な態度を取られても気にしない。
『でも一体どんなケンカした訳? 怒ってるのに迎えに来るとか変じゃない?』
「そ、れは……」
千歳があたしの異変に気付いたと言っても、全て気付いた訳じゃない。
それにあたしも詳しくは話していないし。
だからわざわざ言う必要もないよね、……と言うより、言いたくない……。
“さよなら”
その言葉は、あたしのためだと言った高遠先輩。
だけどそんなのきっと嘘。
本当は、ただあたしを突き離したかっただけ。
本当は、ただあたしに飽きたから……簡単に切り捨てたかっただけだと思う。
あんな一方的に告げられた言葉なんて、受け入れたくない……。
「どうしても話さなくちゃいけない内容なんだよ。だから会って話すの、……別れ話かな……」
事実を濁して、千歳の反応を見てみる。
だけど自分の発したあながち嘘じゃないそんな言葉は、痛いほどにあたしの胸を締め付けた。
別れなんてあって欲しくない、あの言葉は嘘だと言って欲しい。
そう願っても、多分……高遠先輩はあたしに告げるだろう。
最初から、傷付けるためにあたしに近付いた貴方からの仕打ちは、あまりにも残酷すぎる……。