純情恋心
『答えられないの?』
答えられない……訳じゃない、ただ、どう答えればいいのかがわからない。
「……どうして、なんて……そんなのあたしにだってわからないです」
『わからないって……それじゃあ俺はもっとわからないよ?』
ギュッとスカートの裾を握り締めて顔を反らすあたしに、高遠先輩は苦笑いで答える。
『だからね、ほら……那智の気持ちなんてそんなものなんだろう』
「っ、そんなものってなんですか……! あたしの気持ちにっ、先輩がそんな事を言う権利はないです……!!」
高遠先輩の言葉にカッとなって睨むように見上げると、高遠先輩は顔を歪める。
『だってそうだろう!? わかりもしない気持ちを信じていたって、そんなの……!!』
両肩を強く掴まれて揺さぶられ、顔を隠すように俯いた高遠先輩に……あたしは逆に冷静になっていた。
そうだった……、高遠先輩は、元カノに……
「あたしはっ……あたしはちゃんと、先輩が好きです……!」
好きになった理由がわからなくても、あたしのこの気持ちに嘘はない。
だったらそれを伝えればいい、わかってくれるまで、何度も、何度も。
『ただ好きなだけじゃだめなんだよ……! そんな言葉なんて、簡単に言えるじゃないか……!!』
「っ、簡単になんて言えないです……!! 傷付くと知っているのに、……先輩はあたしを、突き離すだけなのにっ、好きだなんて、そんなのっ……」
――簡単に、言えるはずがない。
想いが通じ合っている訳でもないのに、自分の気持ちを伝えるのは怖い。
叶わないとわかっている相手なら、返される答えは決まっているから……なおさら怖いに決まってるのに。