純情恋心
言われてみて掛け時計を見上げると、高遠先輩との話が終わってから30分は話し込んでいたんだと気付かされた。
《あたしは別に平気なんだけどね、那智は時間とか、……そうだ、携帯料金とか大丈夫なの……!?》
「っえ……あ、だめかも」
《えぇっ!? だめかもって……じゃあ切るよっ、那智ったらほんと何してるのよもうっ!!》
あたしよりも焦る千歳が少しおかしくて、思わず笑いそうになった。
だけどそんな余裕すら与えてくれない、千歳の最後の弾丸トークに一生懸命耳を傾けていると……なんだか少し泣きそうになった。
《いい那智、何があっても高遠先輩を離しちゃだめだよ!? 好きならちゃんとそう伝えて、意地でも粘れ!!》
「ぅ、うん……っ」
《だいたい高遠先輩が那智を振るとかほんと考えられない……何か理由があるんだろうから、出来ればそれもちゃんと聞くのよ!?》
「っ、わかっ……」
《じゃあね那智っ、切るよ、また明日!》
「え……、ちょっ……!?」
《ツー…、ツー…、ツー……》
あっという間に話を終わらせた千歳に通話を切られ、しばらくは頭が痺れている感じだった。
高遠先輩を離さないように、なんて……そんな事出来るのかな?
今まで何度も離れていかれないようにとしてきた事を、ことごとくはね除けられていたのに……。
あたしが高遠先輩を繋ぎ止められる事って、一体何?
嘘を付かない事?
裏切らない事?
……いまだにそれすらわからないのに、高遠先輩を繋ぎ止めるなんて、絶対無理だよ……。
諦めたくなくても、それすら叶わない気がして……、あたしは重い気持ちのままベッドに横になった。
考えても考えても、答えが見つからない。
高遠先輩……どうしたらあたしは、貴方の心を得られるのですか……?
どうか教えて欲しい、そして貴方には、あたしの貴方を想う気持ちが本当なんだって、信じて欲しい――……。