純情恋心

言われてみて掛け時計を見上げると、高遠先輩との話が終わってから30分は話し込んでいたんだと気付かされた。

《あたしは別に平気なんだけどね、那智は時間とか、……そうだ、携帯料金とか大丈夫なの……!?》

「っえ……あ、だめかも」

《えぇっ!? だめかもって……じゃあ切るよっ、那智ったらほんと何してるのよもうっ!!》

あたしよりも焦る千歳が少しおかしくて、思わず笑いそうになった。

だけどそんな余裕すら与えてくれない、千歳の最後の弾丸トークに一生懸命耳を傾けていると……なんだか少し泣きそうになった。

《いい那智、何があっても高遠先輩を離しちゃだめだよ!? 好きならちゃんとそう伝えて、意地でも粘れ!!》

「ぅ、うん……っ」

《だいたい高遠先輩が那智を振るとかほんと考えられない……何か理由があるんだろうから、出来ればそれもちゃんと聞くのよ!?》

「っ、わかっ……」

《じゃあね那智っ、切るよ、また明日!》

「え……、ちょっ……!?」

《ツー…、ツー…、ツー……》

あっという間に話を終わらせた千歳に通話を切られ、しばらくは頭が痺れている感じだった。

高遠先輩を離さないように、なんて……そんな事出来るのかな?

今まで何度も離れていかれないようにとしてきた事を、ことごとくはね除けられていたのに……。

あたしが高遠先輩を繋ぎ止められる事って、一体何?

嘘を付かない事?

裏切らない事?

……いまだにそれすらわからないのに、高遠先輩を繋ぎ止めるなんて、絶対無理だよ……。

諦めたくなくても、それすら叶わない気がして……、あたしは重い気持ちのままベッドに横になった。

考えても考えても、答えが見つからない。

高遠先輩……どうしたらあたしは、貴方の心を得られるのですか……?

どうか教えて欲しい、そして貴方には、あたしの貴方を想う気持ちが本当なんだって、信じて欲しい――……。

< 121 / 184 >

この作品をシェア

pagetop