純情恋心

 * * *

『なんであたしもいなきゃいけないのよ!?』

「だって、ここにひとりでいるの気まずいんだもん……っ」

――最後のチャンス、それは授業が終わって帰宅する高遠先輩を捕まえる事。

運よく今日は先輩達の方が1時間授業が多くて、あたしは千歳を巻き添えにして下駄箱の前に座り込んでいた。

『だったらここじゃないところで待ってなさいよ!』

「だって、それだと会えないかも知れないから……」

『もーっ、なんなのよあんたさっきから“だって”ばっかりで……少しは自立しなさい!』

小さい子どもをたしなめるような千歳の言葉は、面倒そうにしていながらも優しくて。

だからあたしは、ついつい甘えてしまう。

「だっ……ゴホン、あたしには千歳しか頼れる人がいないんだもん……」

『なにごまかしてんのよ、また言いかけたでしょ。……まぁ頼られるのは嬉しいけどさぁ……、どっちにしろ話す時は那智と先輩ふたりきりじゃん』

特に痒くもなさそうな頭を掻きながら、もっともな事を言う千歳にあたしは返す言葉が見つからない。

体育座りをしていた両ひざを抱え、ちょっと俯いてなんとかやり過ごそうと試みる。

『黙り込んだってしょうがないでしょう、とにかくあたしは帰る』

「えぇっ、なんで……お願いひとりにしないで!」

立ち上がった千歳に手を伸ばし、帰ってしまわれないようにギュッと腕に絡み付いた。

『ちょっ、……もー那智、今回の件はあたしには関係ないし、あたしがいたって何も変わらないんだよ?』

「っ……わかってる、わかってるけどお願い、今はひとりにしないで……っ」

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