純情恋心
高遠先輩と会ったところで、ちゃんと話し合ってくれるかなんてわからない。
もしかしたら会えても無視されるかもしれない……、そういう不安に駆られると、どうしても怖くて……。
だからせめて、会うところまではひとりになりたくない。
もしかしたら不安で逃げ出しそうになるかも知れないから、そういう時それを止めてくれる人がいて欲しくて……。
『……わかったわよ。今はいてあげるから、高遠先輩の姿が見えた時点であたしは帰るわよ?』
「ぅ、うん……ありがとう千歳……っ」
渋々といった様子だったけど、いてくれると言ってくれた千歳に感謝して、あたしはにこりと微笑んだ。
『あーあ……那智には敵わないよ、まったく』
千歳はひとつ大袈裟にため息をつきながら、あたしの頭をくしゃくしゃと撫でて微笑み返して。
『高遠先輩もさ、那智のこういうところに惚れたのかもね』
「……え?」
不意にそんな事を言ったから、あたしは思わず呆けた声を出してしまった。
こういうところ、って……どういうところだろう?
そういえばあたし、第一に高遠先輩があたしのどこを好きになってくれたのか知らない。
ただ“好きになった”という言葉をおぼろげに聞いただけで……実際の事なんてわからない。
そう思ったら高遠先輩の“好きになった”という言葉に対して、急に不安が込み上げてきた。
やっぱり高遠先輩……、もしかしたらあたしの事なんて、今でも……
『那智、おーい?』
「っえ、な、何……!?」
突然顔を覗き込まれてびっくりして顔を上げると、逆に千歳にびっくりされた。
『ちょっと那智、顔色悪いけど大丈夫……!?』
心に込み上げてきた不安を隠すように笑って見せると、千歳にはすぐにバレてしまう。
「別にっ、大丈……」
『嘘つかないで、……また何か変な事考えたんでしょう?』