純情恋心
『正直俺も驚いたよ、でも君の事すごく大切みたいだし、大丈夫だよ!』
あたしに笑顔を向けて、ぽんと肩を叩くと立ち上がった先輩は、何事もなかったかのようにあたしに別れを告げた。
下駄箱を開けて、上履きからローファーに履き替える先輩の姿を見ながら……あたしの頭の中は混乱していた。
高遠先輩は、彼女を作る気なんて初めからなかったって事だよね……?
そっか、そうだよね……、高遠先輩は初めから、あたしの事なんてなんとも思ってなかった。
そんなの知ってる、それでもあたしは高遠先輩を好きで、離れたくなんかなくて……。
……でもそれって、そんな一方的な想いって虚しくない……?
今さらそんな風に思ったあたしは、高遠先輩の傍にいる事が急に怖くなってしまった。
一緒にいても、高遠先輩はあたしを好きじゃない。
いくら“君を好きになった”と言っていたって、あんなのただの独り言で、ただ口を吐いただけの言葉かもしれない。
彼女なんていらない、……本当にそう言っていたのなら、あたしの想いは……報われない……?
急に目の前がグラリと歪んで、あたしは咄嗟に、ついていた手で床をギリッと掴んだ。
爪が擦れる、指先が痛い、目が、霞んで……
『――……な……、……!』
……誰かが、あたしを呼んで……――そこであたしは、意識が途切れた。