純情恋心
* * *
「んー……ん……っえ!?」
――気が付くと、そこは殺風景な真っ白な世界。
勢いよく体を起こすと目眩がして、あたしはそのまま後ろに倒れ込んだ。
だけどあたしの体は柔らかい白いものに守られて、……それが布団なんだと気付いて、倒れても痛くも何ともなかった。
そのまま見上げた真っ白な天井、微かな薬品の匂い、そしてあたしを囲う真っ白なカーテン。
それらはあたしに現在地を示す。
……ここ、保健室だ……。
ゆっくり体を起こし、カーテンを少し開けて保健室内を見てみるけど、誰もいない。
先生は職員室にでも行ってるのかな……なんて考えながら辺りを見回すと、ふと黒いソファーに視線が止まった。
鞄が、ふたつ……?
黒いソファーと似たような色だから確信はないけど、あたしの焦げ茶色のスクールバッグに寄り添うように、黒いスクールバッグがあった。
誰のだろう……、もしかしてあたしをここまで連れてきてくれた人のかな?
でもその人物もここにはいなくて、あたしはカーテンを閉めてもう一度体を横にした。
……もう暗いなぁ……。
ごろりと横向きになると、カーテンの隙間から見えた窓の外はもう薄暗くて、だいぶ時間が経ってしまった事をあたしに知らせる。
今何時なのかな、高遠先輩は……もう帰っちゃったよね、絶対……。
その薄暗さは、高遠先輩との事はもう時間的に無理だとあたしに悟らせた。
やっぱり高遠先輩は……もうあたしとは一緒にいてくれないんだろうな……。
遠退いてきた意識の中で、なんだかもう全てがどうでもよくなったような錯覚に陥ったあたしは、ゆっくりとまぶたを下ろす。
どうせ高遠先輩とは昨日で本当に終わっちゃったんだと……全てを諦めてしまいたくなって、ギュッと目を瞑った、その時だった。
ギィッとドアが開く音が聞こえて、あたしは体はそのままに目を開けた。