純情恋心
「っ……なんで、そんな事言うんですか……っ」
そう問いかけても答えはなくて、ただ強く握り締めた手にさらに力が入ったのがわかっただけ……カーテンが、微かに震える。
「答えて下さい……!! どうしてそういう、中途半端な事をするんですか……高遠先輩っ……!」
ちゃんと姿が見えなくても、そのシルエットと声で誰なのかなんてすぐにわかった。
でもどうして、高遠先輩がここにいるの……?
カーテン越しに高遠先輩の手を握り締めると、一瞬、払おうとしたのかその手に力が入った。
だけどすぐにその力がゆるむと……つと、小さな呟きが聞こえた。
『もう会わないつもりだった、それなのに那智……君が目の前で倒れたりするから……』
「え……?」
『一体何があったの? ……まさか、昨日あまり寝てなかったとか言わないよね……?』
「っ……」
真相をずばり言い当てられて、あたしは思わず黙り込む。
するとカーテン越しに大袈裟なため息が聞こえて、あたしは高遠先輩の顔あたりを見つめた。
『……思いたくはないけど、まさか俺のせい?』
「そ、れは……」
高遠先輩の少し切なげな声にあたしが俯くと、それが見えたのか……、高遠先輩は苦笑いを漏らす。
『そうか……でも謝らないよ、俺はもう君とは関わらないって決めたんだ』
「っ、そんな、酷い……」
『知ってるよ、俺は酷い人間だ。……だから那智、もうこれ以上俺を酷い人間にさせないで?』
ポスッとカーテンに頭をあてると、高遠先輩は手を揺らしてあたしに手を離すように促す。
それでもあたしは、それに抗う。
さらにきつく手を握り締め、高遠先輩の額に自分の額をあてた。