純情恋心
「どうして……だって先輩は、あたしを好きになったと言ってくれたじゃないですか……!!」
自分の胸と高遠先輩の手をきつく握るけど、胸に埋め尽くされた切なさはどうしたっておさまらない。
高遠先輩の手を握り締める力さえ、次第に弱くなっていくだけで……。
だけど高遠先輩……貴方はきっと、何か間違ってる。
だってあたしは、貴方が呟く言葉ひとつひとつを信じるから、だから……
「信じたいのは、あたしだって一緒なのに……っ」
――相手を信じたいと思うのは、あたしだって一緒。
嘘をつかれるのを恐れる事とか、裏切られるかも知れないとか……考えてしまうのは貴方だけじゃないんですよ?
あたしだって、何度も突き離されてきたのにめげずに貴方と向かい合うのは、正直怖い。
それでも高遠先輩、あたしは貴方を信じたいから。
だからあたしは何度でも向かい合う、何度でも貴方を追いかける、何度でも……貴方に想いを伝えるから。
「お願いだから、信じて下さいっ……!」
もう一度両手で高遠先輩の手を握り締め、その手に額をあてて願いこう。
突き離す事ばかりじゃなくて、どうか受け入れる事も考えて下さい……!
『……那智』
あたしの名前を小さく呟くと、不意に高遠先輩のもう片方の手が、あたしの頭を撫でた。
カーテン越しだから、顔を上げるとその手は離れてしまうけど……その手はそのまま、あたしが握り締める高遠先輩の手の上にのせられた。