純情恋心

「どうして……だって先輩は、あたしを好きになったと言ってくれたじゃないですか……!!」

自分の胸と高遠先輩の手をきつく握るけど、胸に埋め尽くされた切なさはどうしたっておさまらない。

高遠先輩の手を握り締める力さえ、次第に弱くなっていくだけで……。

だけど高遠先輩……貴方はきっと、何か間違ってる。

だってあたしは、貴方が呟く言葉ひとつひとつを信じるから、だから……

「信じたいのは、あたしだって一緒なのに……っ」

――相手を信じたいと思うのは、あたしだって一緒。

嘘をつかれるのを恐れる事とか、裏切られるかも知れないとか……考えてしまうのは貴方だけじゃないんですよ?

あたしだって、何度も突き離されてきたのにめげずに貴方と向かい合うのは、正直怖い。

それでも高遠先輩、あたしは貴方を信じたいから。

だからあたしは何度でも向かい合う、何度でも貴方を追いかける、何度でも……貴方に想いを伝えるから。

「お願いだから、信じて下さいっ……!」

もう一度両手で高遠先輩の手を握り締め、その手に額をあてて願いこう。

突き離す事ばかりじゃなくて、どうか受け入れる事も考えて下さい……!

『……那智』

あたしの名前を小さく呟くと、不意に高遠先輩のもう片方の手が、あたしの頭を撫でた。

カーテン越しだから、顔を上げるとその手は離れてしまうけど……その手はそのまま、あたしが握り締める高遠先輩の手の上にのせられた。

< 135 / 184 >

この作品をシェア

pagetop