純情恋心
素直に貴方の言う事を聞いていれば、貴方はあたしを受け入れてくれたりはしないんですか?
聞き分けなく、貴方を好きだと言うあたしがいなければ……貴方はもっと、素直にあたしと向き合ってくれるのでしょうか……。
あたしは素直に、高遠先輩の言う通りに少しだけ距離を取る。
俯いていても視界に入る高遠先輩は体を起こし、しばらくの間ただ黙ってあたしを見つめていると……つと、口を開いた。
『……那智はさ、幸せになりたいと思う……?』
突然の問いに、どう答えたらいいのかわからないあたしは、顔を上げて高遠先輩を真っ直ぐに見つめる事しか出来ない。
「………」
どうして突然、そんな事……?
真っ直ぐに見つめ合うと、なんだか心が見えるような気がする。
そう思って見つめた高遠先輩の切なげな眼差し、……たしかにそれはあたしに何かを問いかけていて……。
それでもあたしには、高遠先輩の心までは読めない。
そんな自分が悔しくてあたしが涙ぐむと、高遠先輩は苦しげな表情になった。
『やっぱり……俺は君を、幸せには出来ないよ……』
――突然、はらりと高遠先輩の瞳から落ちた一粒の雫。
それは涙で歪んだあたしの視界でも確認出来た程の、大きな雫……。
「ど……し、てっ……」
涙声で問いかけても、俯いた高遠先輩は口をつぐんだまま。
「先ぱい……っ」
一向に口を開かない高遠先輩に疑問を感じたあたしは、自分の涙を拭って高遠先輩を見つめた。
「……っ!」
一粒、また一粒と床に落ちていく雫を見て、あたしは言葉より先に体が動いた。
気付けばあたしは、小さく見える高遠先輩をギュッと抱き締めていた。