純情恋心
「あたしはっ、先……ぱいの、傍にいたいですっ……!」
いくら小さく見えたとはいえ、実際の高遠先輩はあたしより遥かに大きいから、首に腕を回して胸におさめるのが精一杯。
それでもいつもならあたしを突き離す腕は、床に力なくおろされたままで……。
そんな高遠先輩から、今まで見た事のなかった部分を垣間見た気がした。
「先輩は……幸せに、なりたくないんですか……?」
そう問いかけるとピクリと反応した高遠先輩に、もう一度他の言葉で問う。
「本当はっ、幸せになりたいんじゃ、ないんですか……?」
あたしの幸せを願うばかりでなく……貴方自身の幸せは、どうなんですか?
幸せになりたくない人間なんて、いないと思うから……どうか正直に答えて欲しい。
貴方の幸せを、貴方自身が願う事は、許される事だから。
「答えて下さい……っ、あたしは先輩を、幸せにしてあげたいっ……!」
抱き締める腕に力を込め、ギュッときつく高遠先輩を閉じ込めると、ふとあたしの背中に何かが触れた。
それが高遠先輩の腕だと気付いた時、つと、その腕はそのままあたしの体を強く締め付ける。
『……なりたい、よ……』
小さくかすれたか細い声は、控えめながらに本心を主張する。
やっぱり貴方だって、幸せを願うんじゃないですか……。
だったらあたしは、その願いを叶えたい。
さらにきつく抱き締め、あたしは頭を高遠先輩の頭に近付けた。
耳元に直接、言葉を伝えるために。
「あたしじゃ、先輩を幸せに、させてあげられませんか……っ?」