純情恋心
高遠先輩があたしの幸せを願うのなら、あたしだって、高遠先輩の幸せを願いたい。
だってあたしは、貴方が――……
「好きですっ……あたし、どうしても先輩が好きなんです……!」
他人の幸せを願う事は、本当は多分一番難しい。
他人の幸せより、自分の幸せを願うのが普通だから。
それでも……それが愛しい相手なら、どうしてか簡単に出来てしまうのは……気のせいじゃないよね?
だってあたし達は、お互いがお互いの幸せを願ったから……。
「先輩の幸せは、なんですか……?」
どうしても涙声になってしまうけど、しっかりそう問いかけると、高遠先輩の腕に力が入った。
「先輩の願いは……」
『那智と、一緒にいたい……っ』
あたしの胸に顔を押しあて、震える声でそう言った高遠先輩。
――それでもそれは、一瞬の出来事。
『嘘……ごめん、嘘だよ、俺は那智と離れたい……一刻も早く』
何かを思い出したかのように顔を上げてあたしから手を離すと、その手はあたしの両肩を軽く叩き、距離を取る。
背けられた顔は、いつものようにあたしを突き離したつもりなのかもしれないけど……高遠先輩は、やっぱり嘘つき。
「離れたいなんて……そんな嘘、つかないで下さい……っ」
『っ、嘘じゃない、本当に……』
「だったらっ! ……どうしてまだ、震えているんですか……?」
肩をすくめ、微かに震える貴方の体は何を意味しているの?
……その答えは、簡単ですよね?