純情恋心
《那智は今まで、俺に対して呆れるくらいに積極的だっただろう。だからあの子に対しても、同じくらい積極的にいかないと……》
困らせてしまったのかな……高遠先輩の声が、少しだけ小さくなった。
それが悪い気がして、あたしは声を大にして言葉を返す。
「ごめんなさい……っ、あたし、ちゃんと友達に電話します! それから……」
《那智》
「っ?」
言葉を途中で遮られ、疑問を投げ掛けるようにあたしが黙ると。
《だったらもういいだろう、電話、切るよ》
携帯越しに、高遠先輩が静かにそう言った。
「っ……な、んで……?」
《俺は別に、今那智と付き合っているつもりはないからね。無駄話はご法度だろう》
「そんなっ、……嫌です、だってあたし……!!」
《まだだめだよ、……俺はそんなすぐに覚悟を決められない》
携帯越しに聞こえた苦しげな声が、高遠先輩の心情を物語る。
……たしかに高遠先輩は、覚悟を決めるまであたしと距離を置きたいと言った。
でも、だからって本当に離れてしまうと、そのまま気持ちまで離れられてしまいそうで、不安で……。
《大丈夫だよ那智、俺は冷めにくいタイプだから》
あたしを不安にさせないように言ったのか、少し苦笑いを混ぜたその言葉は、どうしてか余計にあたしを不安にさせる。
高遠先輩の気持ちを信用していない訳じゃない、ただ、自分の不安の方が大きくて……。
「保証はあるとは言い切れない、……そう言いましたよね……?」
今日、学校でそう言った高遠先輩。
あの時は流されるように納得したけど、保証がないならどうしたって信じきれない。