純情恋心
あたしは恋をした事がない、……つまりキスだってした事なかったのに。
なのに何で、なんで彼氏でもない高遠先輩にキスされたの……!?
あたしはファーストキスが奪われたというショックや驚きよりも、何で高遠先輩があたしにキスをしたのかが理解出来なかった。
だからあたしは迷わず高遠先輩を見つめて、真意を確かめようと口を開いた。
「っ、なんで……、何でき、……キス、したんですか……っ!?」
あたしのストレートな問いかけに、高遠先輩は一度目を見開いて。
だけどすぐに笑い出して……驚きの言葉を口にする。
『何で、って……だって那智は俺のものだろう? 俺のものに俺が何しようと、俺の勝手だろう?』
「……へ?」
『何でそんな顔してるの? だってちゃんと聞いただろう、“俺のものになる気ない?”って……』
あまりに驚きすぎて、あたしは口を開けたまま動けなくなってしまった。
だって……“俺のものになる気ない?”だなんて、そんな言葉、聞いてもいないのに……。
『ちゃんと聞いたよ? いや、聞いてなかったとは言わせないよ……?』
これはあたしの落ち度だと言うような、高遠先輩のその言葉に、あたしは言葉が出なかった。
『那智、君は俺のものだ。約束だよ?』
そんな、約束だなんて言われても……無理。
「嫌……無理ですっ、なんで……あたしはっ、あたしはそんな約そ……」
『だめだよ、……逃がさないから……』
その言葉と同時に、あたしは体を引き寄せられた。