純情恋心

 * * *

あの日から、早いものでもう数ヵ月が経った。

高遠先輩とは、たまに学校内で会って挨拶くらいはする。

メールもたまにしてくれているけど、相変わらず、電話はさせてくれない……。

そんな状況が続き、また日々が過ぎていく。

肌寒さを残していた春に出会って、今は次第に寒くなっていく秋。

去年までは短く感じていた夏休みも、高遠先輩の事を考えては会えないとため息をつき、とても長く感じていた。

それなのに夏休みが終わっても、相変わらずなんて……高遠先輩、あたしはいつまで待てばいいんですか……?

やっぱりこのまま終わってしまうんじゃないかと考えると、哀しくなってしまう。

だから早く、覚悟を決めて欲しい……。


『――那智ーっ、出てきたよ!』

窓の外を眺めていた千歳が、あたしを手招く。

あたしはいつもの時間がきたと、少し胸を高揚させながらそちらに近付いた。

『相変わらず見つけにくいままだね……』

「っ、あたしはわかるからいいのっ」

毎回のように同じ事を言われ、同じ事を返す。

最早これが日課になってきていた。

体育の授業で外に出てきた高遠先輩は、先週までは半袖だったのに、今日はジャージを羽織っている。

そんなところに時間の流れを感じて、あたしは無意識にため息をついていた。

それを千歳にとがめられる。

『ほらっ、また高遠先輩見ながらため息ついてる! 理由は聞かないけど、いい気分しないからやめて』

相変わらず千歳に本当の事を話していないまま、それでも“今はお互い距離を置く事にした”とだけは伝えていた。

千歳には“そんな関係は変”と言われたけど、正直あたしは別れずにいられただけでもよかったと思っているくらい。

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