純情恋心
だから、もう少し我慢しなくちゃいけないのに……。
「……最近、ちょっと不安なの……」
窓の外の、友達とふざけ合って笑っている高遠先輩を見下ろしながら、あたしはそう呟いた。
待つ事に苦痛が伴ってきていた今、あんな風に笑っている高遠先輩を見るのが、なんとなく辛くて……。
『不安って、どんな風に? それくらいでもあたしに話せない?』
高遠先輩との事を突っ込んでは聞かないでくれる千歳は、遠慮がちにそう問う。
あたしは首を横に振り、口を開く。
「距離を置いてだいぶ経つのに答えが出なくて、……本当は、もうあたしの事なんとも思ってないんじゃないかって、不安で……」
知らずに俯いていたあたしを、慰めなのか、千歳はあたしの頭を優しく撫でてくれる。
それだけで少し気持ちが穏やかになったような気がして、あたしはもう一度高遠先輩を見つめた。
「なんか、初めから微妙に遠いんだよね……高遠先輩って」
優しくしては突き離し、それでもやっぱり心根は優しい高遠先輩。
その微妙な性格が、なんとなく微妙な距離を作っていた気がして……あたしは自嘲気味に笑う事しか出来なかった。
そんなあたしに、千歳は少し笑って口を開いた。
『距離を置いた理由は詳しく知らないけどさ、不安があるんだったらそう伝えてみれば?』
「……でも、会ってくれないから……」
『会ってくれないなら会いに行きなさいよ! 高遠先輩はそれも許してくれない訳!?』
会いに行くなんて、怖くて考えもしなかった。
それに待つって決めた以上、自分から行くなんて、そんなの……
『考えるよりまず先に行動してみれば? しないで後悔するより、して後悔する方が、……違う、とにかく行動あるのみだと思うんだけどなー』
言葉を返せずにいたあたしに、千歳はそう言った。