純情恋心
「だっ、て……」
『だって? だって……何?』
「だって……あたしはっ、……あたしは、高遠先輩の、ものじゃないです……っ!!」
大きな声でそう発したあたしに、ただでさえさっきからジロジロ見られてたのに、今の一言でさらに視線が注がれる。
そこで我に返ってあたしは俯いたけど、やっぱり高遠先輩には、それを許されない。
『那智、君は約束が守れないの?』
「っ……」
鋭い視線でそう言われて、あたしは怯みそうになった。
だけど、あたしはそんな約束はしていない。
例え“俺のものになる気ない?”と問われた事に頷いていたとしても……約束なんて、してはいないから。
だからあたしは、怯んだりなんてしない……っ!
あたしは真っ直ぐに高遠先輩を見据えて、口を開く。
「そんな約束なんて、してないですっ……!!」
はっきりそう言ったあたしに、高遠先輩は少し驚いたような表情になった。
だけどすぐに真顔になると、少し眉を潜めた。
『約束してない? ……いや、まぁたしかに約束自体はしていないかも知れないけど……』
「だからあたしはっ、そんな言う事なんて……聞けません……!」
何か言われる前に言い返せばいい、そしたら高遠先輩だって何も言えないはず。
そう思ったけど、やっぱりあたしは甘かった……。
『――でも那智、俺のものにはなるんだよね』
「なっ……そんな、だからあたしはならな……」
『自分で言ったんだよ? だめじゃないって』
「っ、でもそれは、電車が通過して何を言ったのか聞こえなかっ……」
『言い訳無用、君は俺のものだから。絶対、……離さないよ?』
「っ……!?」
“離さない”
そんな言葉を言われて、あたしは思わず赤面してしまった。
だってそんな事、言われた事ないし……まさか言われるなんて、思いもしなかったから……。