純情恋心
やだ……、どうしよう……っ
駅のホーム、人波に押し流されて、あたしは体をよろつかせていた。
小さな体がコンプレックスで、人込みには埋もれてしまうから、なるべく避けていたのに……あたしは今、見事に埋もれてしまっている。
『ちょっ……那智[ナチ]、大丈夫ー!?』
さっきまで隣にいた友達は、人の流れに乗ってどんどん先に行ってしまう。
だからあたしはついつい焦ってしまって……友達に追い付こうと、人と人との間を無理矢理割って入った。
それが、間違いだった。
「待って千歳[チトセ]……っ、行かな……っきゃ!?」
あたしみたいな小さい体で、人込みを割って入るなんて事はやっぱり無謀で。
あたしは端の方へ押し出されてしまった。
おまけにそれと同時に、誰かの足に自分の足を引っ掛かけてしまって……派手に転んでしまった。
『ちょっとあんたっ、何すっ転んでんだよ、邪魔なんだけど!!』
「っ、すみません……っ」
転んでまだ立てないでいたあたしに、周りから批難の声。
邪魔したくてこうしている訳じゃないのに……、世の中はなんて理不尽なんだろう……。
あたしは少し端に避けてから、立ち上がろうと両手を着いた。
だけど、それさえも邪魔だというように……その手は大きな足に手踏みつけられる。
『うわっ、いきなり手ぇ出すなよ!』
「っ、ご、ごめんなさい……っ」