純情恋心
『那智、もう少しちゃんと見せてごらん?』
高遠先輩はあたしの輪郭を指でたどり、顎を上げた。
『……赤くなってる』
「……っ……!!」
言われてしまって、あたしの心臓は爆発してしまいそうな程にドキドキして、体中に熱がまわる。
恥ずかしすぎて顔を背けると、すぐに両手を頬に添えられてそれを遮られた。
『こら那智、ちゃんと見せてごらん』
「〜〜っ……!!」
真っ赤な顔をじっと見つめられて、あたしは困惑してしまった。
なのに高遠先輩は顔色ひとつ変えないから、あたしは少し悲しくなる。
やっぱり高遠先輩は、あたしの事なんて何とも思ってないんだ……。
顔を反らせないあたしは、とりあえず視線だけ逸らした。
『……うん、やっぱり赤くなってるね……痛い?』
「……え?」
『どうなの?』
逸らした視線を向けると、高遠先輩はあたしを真っ直ぐに見つめて小首をかしげた。
あれ……?
赤くなってるって、もしかして鼻の事……!?
顔が赤くなってる事を言われたと勘違いしていたあたしは、そんな自分が恥ずかしくなって手で顔を覆った。
『何してるの……、痛いなら言って』
顔を覆った手を取り払われて、怪訝な表情で見つめられる。
その表情に何か言わなきゃと焦り、あたしはとりあえず口を開いた。
「っ、ちょ……っとだけ……」
正直もう痛くはないけど、出てきた言葉がこれだった。
『ちょっとだけ……?』
問いかけられてあたしが首を大きく縦に振ると、次の瞬間――……
「ふぇ、……っ!?」
鼻に、高遠先輩の唇があたった。
びっくりして目をしばたかせると、鼻から唇を離した高遠先輩はそんなあたしを見て笑う。
『ははっ、今の瞬きすごいね。どうしたの?』
「っ、だって、……い、今のは……っ!?」
困惑するあたしに、高遠先輩は優しげに目を細めて笑うと、やんわりとあたしの頭を撫でた。
……そんな行動に、あたしはドキドキしてしまう。