純情恋心

どうして高遠先輩は、突き離したり、優しくしたりするのかな……。

『今のは何となくかな。那智が痛いって言ったから……消毒?』

「っえぇぇ……」

『何、まだ痛い?』

「っ、いえっ、もう全然平気ですっ……!!」

あたしが焦りながらそう言うと、高遠先輩はまた優しく笑った。

やっぱり高遠先輩は、何を考えているのかわからない。

あたしの手を引いて歩き出した高遠先輩を、あたしは少し後ろを歩きながらチラチラと見てみる。

今の高遠先輩は、あの日のような優しい先輩。

知らずにあたしの歩幅に合わせて歩いてくれていて、そんな些細な気遣いにあたしは心を弾ませる。

こんな先輩なら……あたし、ずっと一緒にいたい。

この関係を、変わらずに続けていきたい……。

だけどあたしがそう望んでも、きっといつか、あたしは高遠先輩に離される。

繋がれた手を見て、あたしは心苦しくなった。

この優しい手は、いつかあたしを突き離す……。

冷めた瞳であたしを見つめて、冷たい言葉を口にして、きっと……容赦なく突き離すんだろうな……。

そんなのは嫌、だけどもし突き離すなら……あたしが本当に好きになる前に、優しくしないで突き離して欲しい。

優しくされたら、離れられなくなりそうだから……。

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