純情恋心
* * *
『那智』
――放課後には、高遠先輩は約束通りの行動を取ってくれる。
あたしを迎えに来ると、高遠先輩は躊躇もせずに教室の中へと足を踏み入れ、あたしの元に歩み寄った。
『昨日は本当にごめんね。それで、どうやって帰ったの?』
「え? どうって……普通に、帰りましたけど……」
あたしは机の脇に吊るしてあった鞄取り、そう言って高遠先輩を見上げる。
『普通か……うん、まぁそうだよね。でも那智、違うんだよ』
そう言いながら高遠先輩はあたしの手から鞄を取ると、少しだけ微笑んだ。
「え……ぁ、あの、鞄……」
『俺が持つよ、だから代わりに……はい』
「え……っ」
“代わりに”
そう言って差し出されたのは、大きな手のひら。
『……どうしたの?』
「っえ……あの、えっと……」
ここが教室の中だというのに、何の恥じらいもなくあたしに手を差し出す高遠先輩。
その行動にあたしは戸惑ってしまって、熱くなってきた顔を俯かせた。
『……那智、帰るよ』
「っ……っあ……!?」
突然グイッと手を引っ張られて、あたしはよろけながらも急ぎ足で進む高遠先輩に必死でついて行く。
高遠先輩……怒ってるのかな……っ
なんか、ちょっと歩くのが早い……!
「っ……先、ぱいっ」
呼んだ瞬間に、高遠先輩は足を止めた。
それがあまりにも急すぎて、あたしは高遠先輩の背中にぶつかる。
「っ……!!」
『あ、ごめん那智……またやっちゃったね……』