純情恋心

問いかけるように見上げると、高遠先輩は笑った。

『はは、気付いてなかったか……。前にも言っただろう、俺は君が思っているような人間じゃない……』

そう漏らした高遠先輩は、どこか苦しげに見えて。

……だけど違う、そうじゃない、今はあたしが辛い言葉を投げ掛けられたのに……!!

「どういう意味、ですかっ……?」

震える声で、かすれて消えてしまいそうになりながらもゆっくりはっきりとそう問いかける。

まだわからない、あたしの勘違いかもしれない。

――そう、思いたかったのに……。

『……言ったままの意味だけど……?』

そう言った高遠先輩は微かに笑っていて、その微笑みは、どこか自嘲気味に見えた。

「言ったまま、って……それじゃあまるで、あたしは先輩に……」

『そうだよ、……俺は那智を利用した……』

「……え……?」

何を言われたのか、すぐには理解出来なかった。

伝えられた言葉は、酷く重くて暗くて……受け入れられない。

“利用した”?

高遠先輩が、あたしを……?

『……だから那智、もう会うのをやめよう』

「な、んで……っ、先輩……!?」

あたしから顔を背けてそう言うと、そのままあたしに背中を向けて。

『もうこれ以上、君を苦しめたくないんだ……』

小さく呟いたその言葉は、泣いてはいないだろうけど、酷く苦しげだった。

そんなの変だよ……。

たしかに高遠先輩は、いつだってあたしを苦しめてきた……、それは紛れもない事実だけど。

……でも違う、それでも貴方は、あたしを完全には突き離したりしなかった……!!

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