純情恋心
あたしは高遠先輩を見上げたまま瞬きも出来ずに、ただ真っ直ぐ横顔を……言葉を漏らした唇を見ていて。
「そんな……う、そ、ですよね……?」
そう問いかけたのは、そんなの冗談だって、笑って欲しかったから。
なのに……
『ここで嘘をついて、何の利益があると思う……?』
顔をこちらに向けて苦笑いを浮かべた愛しい人は……切実に、そう言った。
――知りたいと願った答えは、あまりに重くて……あたしの胸に、冷たく鋭く刺さった。
それでもあたしは、まだ信じきれなくて。
「そんなの、嘘……だって、そんなっ……!」
高遠先輩は嘘をついてる、あたしはそんなの信じたくない……。
だって、本当に高遠先輩があたしを傷付けるつもりで近付いたのなら。
あの日あたしを助けてくれたのは?
優しく笑って、あたしを助けてくれた貴方は……全部、嘘……?
『ごめん……、これだけは、嘘じゃない……』
震える声で伝えられた言葉は、嘘だと思いたかったのに……そう思えるような口振りではなかった。
今にも泣き出しそうで、切実で……本当に嘘じゃないなんだと、嫌でもわからされた……。
「ど、して……っ」
自分で知りたいと願った、高遠先輩の真実。
傷付けられても平気だなんて、何も知らなかったあたしは思っていた。
それなのに……あたしはまだ、平気じゃなかった。
伝えられた言葉を受け入れられなくて、抑えられなくなった情は熱く、ゆるんだ涙腺から溢れ出して、止まらない……。
『……ほらね、俺は君を傷付けて、泣かせる事しか出来ないんだ……』
あたしの嗚咽を聞いた高遠先輩は、さらに苦しげな口調でそう言った。
どうして……、どうしてそんなに苦しげに言うんですか……?
傷付けるつもりで近付いたのなら、そんなに苦しむ事なんてないんじゃないですか……?