純情恋心
理由を聞く事なんて本当は怖いけど、もう後には引けない。
あたしは高遠先輩の全てを理解しないと、だめな気がするから……。
「傷付く、事なんて……平気です……! だから全部、話して下さい……っ、どうして傷付けるつもりで、あたしにっ、近付いたんですか……!?」
涙を拭う事なく高遠先輩を見上げると、少し驚いたような困惑の表情を向けられた。
それでもすぐに顔をしかめられて、あたしの肩には弱々しく手が添えられた。
『……言ったら君は、何かを変えられるの……?』
「……え……?」
真っ直ぐな瞳は、どこか哀しげにあたしを見つめる。
問われた意味がよくわからなくて小首をかしげたあたしに、高遠先輩は瞳を伏せて……ゆっくりと口を開いた。
『誰でもよかったんだ……年下なら、誰でも……』
「……誰、でも……?」
『そうだよ、那智は貧乏くじを引いただけだ……悪いのは、何もかも俺だ』
自嘲気味に笑う高遠先輩を、あたしはただ哀しい気持ちのまま見つめていた。
高遠先輩の言っている意味を、まだ理解しきれていない。
それでも自分が哀しい思いをするという事だけは、痛いほど伝わってきた。
『……いや、元々は彼女……元カノが悪かったんだ』
その言葉に、あたしは落としかけた視線をもう一度上げて高遠先輩を見つめた。
だけど目が合うと、その視線を逸らされてしまって……どうしてなのかと訪ねる前に、言葉が続けられた。
『人のせいにしてはいけないけどね……。……那智、この先の話を本当に知りたいの……? 出来れば俺は言いたくない……、那智を大切にしたいし、傷付く君を見るのは辛いから……』
「変ですよ、そんなの……っ。だったら……なんで、傷付けるつもりだったんですか……?」