純情恋心

《ツー…、ツー…、ツー……》

完全に避けられてる……。

――あの後、引きずられるように手を引かれて家に帰らせられた。

だけどどうしても納得出来なくて、別れてすぐに電話をかけたけど、着信拒否にされていて……。

ついでメールもしようと思ったけど、そこまで出来なかった。

もしメールさえも拒否設定されていたら、それはすごく辛いから。

これ以上深入りしない方がいい……、傷付く事を恐れちゃだめだって、さっき思ったばかりなのに……。

 * * *

『那智ーっ』

学校へ向かう道、重い足取りで進むあたしを後ろから呼び止める声。

あたしは振り返る事なく、足を止める。

『おはようっ! 昨日はあの後どう……那智……!?』

あたしの顔を後ろから覗き見た千歳は、びっくりしたような表情で一歩後ずさった。

『どうしたのその顔……昨日先輩と何かあったの!? ケンカでもした!?』

「………」

ケンカ……それくらいならまだよかった。

ただケンカしただけなら、いくらでもやり直せる。

謝れば元通り、また高遠先輩と一緒にいられる……。

――でも、今のあたし達は違う。

あたしに“さよなら”と告げて、一方的に離れて行こうとした高遠先輩を、あたしは無理矢理繋ぎ止めた。

聞き分けなく、それは我が儘でも、離れたくなかったから。

でも着信拒否という形で現実を突き付けられて、高遠先輩の言葉が本気だったのだと気付かされて。

それが哀しくて、昨日の夜は眠れなくて……。

眠れずにいたら、どうしても色々と考えてしまったあたしは、いつの間にか泣き続けていた。

だから顔は自分で見ても酷いと思う程で、……本当は学校を休もうかと思った。

でも休んでしまって、それを高遠先輩に知られてしまったら。

そして嫌な思いをさせてしまったら、自分も嫌だから……。

「……なんでもないの、ちょっと色々あっただけだから心配ないよ」

――だから休む訳にはいかない、現実から目を背けてはだめ。

現実を受け入れなくては、それこそ本当に高遠先輩を失ってしまう気がするから……。

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