脳内ハッカー
「それにお顔もイケメンだしねっ。」
『………ああ、そうだね……。』
母がうきうきしていた本当の理由はきっとこれだ、と真瑠は思った。何故ならキムタクを見るときと同じ目をしていたからだ。
母は真瑠からガシッと新聞を奪うと紙面の一番下を見た。
「……昨日日本に帰国したばかりなのね、帝くん。」
『そ、そうなんだ。』
母が釈迦如来帝のことを“帝くん”と称したのはあえて触れずにいこう。
おそらく母の中で“帝くん”は“ハンカチ王子”や“ハニカミ王子”的な感覚で受け入れられているのだろう。真瑠は母を慈悲深い遠い目で見た。
「やっぱり頭がいいと特ねー。」
『ね、私もこれだけ頭がよければ学校行かなくてすむのに……。』
真瑠が言うと、母はあっと思い出したように真瑠を見て言った。
「あ、学校と言えば真瑠、いいの??」
母の問いに真瑠はえっと少し疑問の混じった表情になった。何のことか分からない。
真瑠のその表情を見て、母は壁に掛かった時計を指差した。
そしてその瞬間、偶然にテレビからも残酷な音声が流れた。
―7時58分!7時58分!―