‐あおい‐
【1.悪寒】
―――――寒い.
普通の寒さとは違った.
何か、もっと恐ろしいような.
出来事は鮮明に覚えている.
自分たちの乗った船が―――――
薄暗い中、瀬戸は浜辺に打ち上げられた体を起こし、あたりを見渡す.
一人の自分と同じように倒れている女性を見つけた.
「・・・おい!起きて!」
瀬戸は樽谷夏希の肩を揺する.
樽谷夏希はゆっくりと目を開けた.
「・・・僑介.」
恋仲の二人は互いの視線を合わした.
瀬戸はそっと夏希の背中に手をやり、体を起こしてやる.
「大丈夫?・・・」
瀬戸が心配そうにたずねる.
対し、夏希は不安定な笑顔を作り、大丈夫 と返した.