【件名:ゴール裏にいます】
でも不思議とそんな感じはしていた。
権田先輩の事もあったのだろうが、ここあさんはもうあの店を必要としなくて良いのだと思う。
沙希ちゃんもここあさんの言葉には何も触れない。
代わりにそっと瓶ビールをここあさんに差し出した。
「ここあ・・いや、名山さん!今夜は飲みましょうね!」
「あら、私に付き合うと潰れるわよ?それでも良くて?」
「えー、っと。すいません、勘弁して下さい」
「ところで!」
カニをひとしきり食べていた沙希ちゃんが言う。
嫌な予感がした・・。
「タクシーの中での話しの続きでもしませんか?」
作り笑顔でそう言う沙希ちゃんの顔を見れなかった。
「楽しい食事中にその話は良いんじゃないですか?ね・・」
「何?楽しくなくなる話って訳だ。へー」
「ちが・・」
「嘘うそ、じょーだん。そんな話なんて聞かなくても分かるよ。どうせアレでしょ、酔い潰れた勇次くんをどこかで休ませたら、名山さんに抱き着いてママ、ママって泣いたんでしょ?名山さんて勇次くんのお母さんにちょっと似てるもんね」
「うそ。そうなの沙希さん」
「うん。誰かに似てるなぁ、って思ってたんだけど、思い出した」
「そう。でもちょっと違うわよ。勇次くんはママ、ママじゃなくて沙――」
「あーー!はい。もう良いですよね!二人共飲みが足りないんじゃないですか?はい、注ぎます注ぎます。ほら沙希ちゃん、僕の分のズワイガニも食べて食べて」
「名山さん、勇次くんてウチのお母さんにも抱き着いて泣いたんだよ。あたしが側にいたのに。結構マザコンかもねー」
「勇次くん、あなた・・」
「あ、僕ちょっとトイレ行ってきます。あー、お腹も痛いかも――」
黙ったまま二人は僕を見送り、襖(ふすま)を閉めた途端に笑い声が聞こえてきた。
(マザコンで悪いかー!)
でも僕はこれで沙希ちゃんに隠し事は無くなった。
と思っていた――。
食事は楽しく進み、そろそろ、と言う時間になった。
「じゃあ、僕は大浴場に行ってから寝ます。明日は帰らなくちゃいけないし、二人もゆっくり寝ておいて下さいね」
「うん。あたし達もお風呂行ってから寝るよ。勇次くん、おやすみぃ」
権田先輩の事もあったのだろうが、ここあさんはもうあの店を必要としなくて良いのだと思う。
沙希ちゃんもここあさんの言葉には何も触れない。
代わりにそっと瓶ビールをここあさんに差し出した。
「ここあ・・いや、名山さん!今夜は飲みましょうね!」
「あら、私に付き合うと潰れるわよ?それでも良くて?」
「えー、っと。すいません、勘弁して下さい」
「ところで!」
カニをひとしきり食べていた沙希ちゃんが言う。
嫌な予感がした・・。
「タクシーの中での話しの続きでもしませんか?」
作り笑顔でそう言う沙希ちゃんの顔を見れなかった。
「楽しい食事中にその話は良いんじゃないですか?ね・・」
「何?楽しくなくなる話って訳だ。へー」
「ちが・・」
「嘘うそ、じょーだん。そんな話なんて聞かなくても分かるよ。どうせアレでしょ、酔い潰れた勇次くんをどこかで休ませたら、名山さんに抱き着いてママ、ママって泣いたんでしょ?名山さんて勇次くんのお母さんにちょっと似てるもんね」
「うそ。そうなの沙希さん」
「うん。誰かに似てるなぁ、って思ってたんだけど、思い出した」
「そう。でもちょっと違うわよ。勇次くんはママ、ママじゃなくて沙――」
「あーー!はい。もう良いですよね!二人共飲みが足りないんじゃないですか?はい、注ぎます注ぎます。ほら沙希ちゃん、僕の分のズワイガニも食べて食べて」
「名山さん、勇次くんてウチのお母さんにも抱き着いて泣いたんだよ。あたしが側にいたのに。結構マザコンかもねー」
「勇次くん、あなた・・」
「あ、僕ちょっとトイレ行ってきます。あー、お腹も痛いかも――」
黙ったまま二人は僕を見送り、襖(ふすま)を閉めた途端に笑い声が聞こえてきた。
(マザコンで悪いかー!)
でも僕はこれで沙希ちゃんに隠し事は無くなった。
と思っていた――。
食事は楽しく進み、そろそろ、と言う時間になった。
「じゃあ、僕は大浴場に行ってから寝ます。明日は帰らなくちゃいけないし、二人もゆっくり寝ておいて下さいね」
「うん。あたし達もお風呂行ってから寝るよ。勇次くん、おやすみぃ」