【件名:ゴール裏にいます】

(ダメだな・・もう酒飲むの止めよう・・)

重い頭を抱え、時計を見たら午後11時だった。

どうやら篠原さんは浴室にいる様子。僕は服を着たままベットの上で仰向けに寝ていた。

(11時か・・カラオケボックスに4時間位いたのか・・さてと、どうすりゃ良いのか・・)

僕ははっとなってポケットから携帯を取り出した。
メールが1件、着信が2件あった。着信の1件は沙希ちゃんからと、もう1件はB社の主任からだ。
時間を考えると折り返しの電話は出来ない。
僕はメールを開いてみた。


【件名:おめでとう☆】
勇次くん、就職おめでとう☆
こんなに早く再就職出来るなんてラッキーだったね。
8時までアパートにいたけど遅くなりそうなので今日は実家に帰ります。
テーブルの上に就職祝いのプレゼントを置いてます♪
気に入ってくれたら嬉しいな。
遅くまでお疲れ様です。


(・・・沙希ちゃん、ごめん・・)


「よし!帰ろう!」

とは言ってみたものの、篠原さんをこのまま一人で残して帰る訳にはいかない。
大体僕から誘ったのだろうか?
それとも彼女から?

先ずはこの状況をなんとかしなければ――。

『カチャ』

浴室のドアが開く音と共に篠原さんが浴室から出て来た。
彼女はバスタオル一枚と言うあらわな姿で僕に近づいて来る。

「起きたんだ・・」

濡れた髪を気にしながら彼女はベットの端に僕に背中を向けて腰掛けた。

アップにした彼女の髪の後れ毛が何とも言えずに色っぽかった。

「あ、あの?どうしてここに?」

僕は気まずさも手伝って笑いながら聞いた。

「勇次君酔っ払って寝ちゃって。いつまでもあそこにいる訳にはいかないし、タクシー呼んで貰ってお店の人と乗せたんだけど、勇次君起きないし。しかたないから私も乗ったは良いけれど、勇次君のアパートも知らないし、かと言って私のうちに連れて帰る訳にもいかないでしょ?困った揚句にタクシーの運転手さんと二人でここまで運んだってわけ」

「はあ・・すいませんでした・・ここってどこですか?」

「大道陸橋の近くのラブホテルよ。私もあんまり詳しくないからいつも通っているこの辺くらいしか思いつかなくって」

「そうですか・・あの・・帰りません?」

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