【件名:ゴール裏にいます】
あまりの心地良さにしばらくの間沙希ちゃんに抱かれていた。彼女の呼吸に合わせるように僕も息をした。
トクントクンと心臓の打つ音が聞こえる。
「勇次くん・・大丈夫?」
「はい?」
「何か、凄い話しになってきたけど、勇次くんらしさを見失わないで」
「僕らしさ・・ですか?」
「うん・・これからいろいろと変わっちゃうんだろうけど勇次くんには勇次くんの素晴らしいものがあると思う。だから・・」
「変わっちゃうって、何がです?」
「え?・・だから社長さんになっちゃうんでしょ、勇次くん」
「僕が?まさか・・」
「えー!ならないの?!」
「なりませんよ!」
「だって・・」
「そこに収まるべきの人はもういるでしょ?僕は人の上に立つ器を持ち合わせてはいません」
「あ・・お姉さんか・・」
「はい。あんなカリスマ性を持つ人こそが相応(ふさわ)しいと僕は思います」
「そうか・・そうだね・・」
「あれ?もしかして社長婦人とか夢見てました?」
「そ、そんな事は無いよ・・」
「分かりやすい人ですね、沙希ちゃん」
「な、何よ。人を単純みたいに言わないで!」
「セレブとか夢見てたんでしょ・・」
「そ、そりゃあ少しは・・」
「単純・・」
「もー!」
僕らはじゃれ合うようにしてソファーの上で重なった。
「まだ夕方まで時間ありますね・・」
「うん・・」
「沙希ちゃん・・」
「勇次くん・・」
唇を重ねると快楽の扉が開けて行った。