【件名:ゴール裏にいます】
「ここですね・・」(ちょっと何こんな所でサボってんのよ)
声を潜めて沙希ちゃんが問い詰めるように言う。
僕はそれを無視し記入を続けた。
「あとここと・・」(あたしに逢いたくて来たの?)
僕は用紙に記入した。
『沙希に逢いたくて来た』
(着いて来て・・)
彼女は潜めた声でそう言うと、
「お客様、そう言った資料はこちらにございます。ご案内します」
彼女はカウンターの外に出て来て僕の脇を歩いてゆく。
僕は彼女に着いて行った。
向かった先は『郷土資料室』の薄暗い一角だった。
彼女はそこまで来るとメガネを外し、僕の首に腕を絡ませ唇を求めてきた。
僕は一瞬驚いたが、彼女の唇を求め返した。
周囲を気にしながらも熱い口づけの交換は止まらい。
ひとしきり舌を抱きしめ合った後、背伸びをしていた彼女は踵を降ろし首に絡ませた腕を解いた。
「ふふっ、固くなってるよ・・」
僕のスラックスの膨らんだ部分を手の平で撫でる。
「ここの資料でも読んでおさめなさいよ。お昼休みにメールするね」
そう言って、彼女は戻って行ってしまった。
一人になった僕は言われた通りに一冊の本を手に取った。
『大友宗林史』
僕の分身はすぐにおさまった。
図書館を出て行く時にカウンターを覗いたが、彼女の姿は無かった。
(化粧でも直しに行ったのかな?)
僕は図書館を後にし、会社に戻る事にした。
図書館では清楚に見える沙希ちゃんも二人っきりになるとあんなにも乱れる。
(女って怖いな・・)
11:00ちょっと過ぎに会社に電話を入れる。
昼前に帰社する者はみんなの昼ご飯を調達して帰る。我社の恒例だ。
電話にはアルバイトの那比嘉さんが出た。
しばらくしたらみんなの弁当を取りまとめた那比嘉さんから折り返しの電話があるだろう。
僕は図書館の駐車場で電話を待っていた。
すぐに那比嘉さんからの電話が鳴った。
大体いつもと代わらないメニュー。
僕はメモを取りながら復唱していた。
最後に那比嘉さんが言った。
「今度、相談したい事があるので時間を作って頂けませんか?」
僕は「そのうちに」と曖昧な返事を返した。