【件名:ゴール裏にいます】
断片的だが思い出してきた。
権田先輩と『果樹江悶』で飲んでいるうちにももちゃんにテイクアウトの話を聞いた。
酔っ払っていた僕は胸ポケットにあった封筒をまんまマネージャーに差し出した。
マネージャーは今日の僕の様子を見て、ももちゃんには勤まらないと判断したんだろう。権田先輩と相談してここあさんを僕に付ける事を決めた。
権田先輩はここあさんに「よろしく頼むわ、慰めてやってくれ」と言い、自分は店を出て行った。
タクシーでホーバー乗り場の前にあるホテルの部屋に二人で入り、ここあさんを裸にした。
ここまでは何とか思い出した。
これから先は―――。
「勇次くん、私を裸にした後、ベッドに押し倒すと胸に顔をうずめて泣いていたわ。『ごめん、ごめん』って。私は勇次くんの頭を撫でながら好きなようにさせた。勇次くんはそのうち泣き止んで眠ってしまった」
ここあさんは一晩中僕を抱いてくれていたらしい。
「ただ、私の名前は『さき』では無いわ」
彼女はそう言うと、再び僕を抱きしめた。
しなやかな身体は僕を刺激するのには十分だった。
僕は彼女の胸に舌を這わせた――――所で携帯の着信音が鳴った。
初めは無視してここあさんの身体に溺れていたい衝撃に駆られたが、どうしても気になり、脱ぎ捨てていた上着のポケットから携帯を出すとメールを確認した。
【件名:〓招待状〓】
勇次君、今日の試合大丈夫だよね。
何度か電話したんだけど出ないから心配してます。
このメール見たら連絡してね。
明日はわが家にご招待だよ♪
沙希ちゃんからだった。
僕の頭にかかっていた靄がついに晴れた。
「ここあさんごめんなさい!急な用事を思い出しちゃって!服を、服を着て下さい!」
僕はベッドから飛び降り、洗面所で顔を洗った。
鏡に写った僕は酷い顔をしていた。
「ここあさん!今何時ですか?」
「もう11時に近いわ」
「そんなに?すいませんタクシー呼んで貰って良いですか?送って行きます!」
「どうしたの勇次くん、そんなに慌てて」
「行かなきゃ、行かなきゃならない所があるんです!」
二人で迎車ランプの点いたタクシーに飛び乗り、大分駅へ向かった。