【件名:ゴール裏にいます】
【件名:だいっ嫌い!】
僕はベットの上で裸になっていた。
沙希ちゃんはシャワーを浴びて、今はベランダで洗濯物を干している。
彼女の鼻歌が耳に心地良かった。
「ねえ?名山さんとは何時に待ち合わせ?」
彼女の言葉に慌てて携帯の時計を見る。
午後6時55分。
(しまった!)
ここあさんとの待ち合わせは午後7時。
今からどう急いでも遅刻するのは確実だった。
彼女を怒らせてはいけない。
僕はとっさに彼女の携帯を鳴らした。
「待ってるんだけど!」
ここあさんは既に怒っている様子だ。
僕は急いで向かう事を伝え、沙希ちゃんになるべく早く準備するように頼んだ。
(最悪の出足だな・・)
「もう!何で早く言ってくれないのよ!名山さんにきちんと謝りなさいよ!」
(イったのは早かったんですけど・・)
僕は沙希ちゃんに怒られつつもステーションワゴンを駅に向けて走らせた。
大分駅のロータリーに入ると仁王立ちのここあさんが見てとれた。
車をここあさんに横付けして、僕は運転席を飛び出した。
「あら?随分と早かったじゃない?」
「ご、ごめんなさい!色々と準備に手間取ってしまって・・」
僕はここあさんの荷物をステーションワゴンのトランクルームに押し込みながら言い訳をした。
「何の準備だったのかしらねっ!」
そう言ってここあさんに思いっきり足を踏んずけられてしまった。
「あっ、その荷物はこっちで良いわ」
ここあさんは中くらいのボストンバッグを僕から取り上げて車に乗り込もうとした。
僕は後部座席のドアを開けてやり、ここあさんが乗り込んでから静かに閉めて素早く運転席に戻った。
「こんばんは。あなたが沙希さんね。名山です、よろしく」
「こんばんは。勇次くんからは聞いていたけど綺麗な方ですね、名山さん」
「あらあら、そんな事はなくってよ。沙希さんもそれなりに綺麗だわ」
(ちょ、それなりって・・)
僕は僕にとばっちりが来ないようにしながらステーションワゴンをゆっくりと発進させた。
「名山さんは下着の販売をなさってるって聞いたんですけど、どんなのを扱っているんですか?」
三人を乗せたステーションワゴンが走って行く。