first contact
「そっちこそ、何してるんですか」

「何って、」

あなたと喋っている以外は、特に何もしていないんですけど。
興味もないくせに、質問してきたのか。
目を泳がせると、ある事に気がついた。

「ヒール、壊れたの?」

彼女は裸足で座り込んでいたのだ。
そして、その近くには、ヒールの折れたサンダルが転がっている。
……階段から落ちた……のか?

高校生にしては大人びた踵の高さだ。
こんなのを履けば、こけても仕方がないとしか言いようがない。

細い足には、微かに擦り傷がある。
足を目で探っていくと、短いスカートと足の隙間が、見えそうで見えない。
女子高生とは言えど、色気は本物だ。
慌てて彼女の顔へと視線を戻した。


彼女は、また不機嫌そうな顔をしていた。

「……だったら、何ですか」

「帰れるの?」

「……」

黙り込む雅ちゃんの視線の先はどこか分からない。
どうして、彼女はこうも刺々しいのだろう。
それから、どうして、俺は彼女をこうも弱々しいと感じてしまうのだろうか。

「送ろうか? どうせ同じ所に帰るんだし」

「いらない」

彼女は吐き捨てるように即答した。
それから、後付けのように首を左右に振った。
揺れる髪は、春に会った時よりも艶を失っていて、人工的な明るい色に染まっていた。

「放っといて下さい。あんたには関係ない」

冷たい言葉が、俺を刺した。
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