first contact
「はぁ……全く誰に似たのかしら、この子は。機嫌が悪いとすぐコレなんだから。ねぇ?」

なぜ、さっき彼女と出会ったばかりの俺へと話を振るのだ。

満希さんに何て返事をすればいいものか。
困った笑いを零すと、彼女が鋭い目付きで満希さんを睨んだのが分かった。
ただでさえ気まずい空気が、さらに凍り付いた気がした。


「雅、こちら今日からアパートに住むことになった楸君よ。挨拶くらいしてちょうだい」

硝子のような眼が、鋭い目付きでこちらへ向けられた。
すかさず、にっこりと微笑みかける。
笑顔を作るのは、得意なはずだった。

「よろしくね」

優しい声で話しかけると、好印象のはずなのだけれど。

「ああ……どうも」


………きつそう。

雅と呼ばれた女の子は、いかにも俺に興味がなさそうに、顔を家の奥へ向けた。
早く家に入りたい、と口に出さなくとも、態度がそう示していた。

靴を脱ぎ終わると、満希さんの横を颯爽と通り過ぎていく。

奥の部屋へ消えていく彼女の背は、さっきの鋭い眼を思わせないほど、華奢で頼りなかった。

そして、どこか物寂しくて、見つめていると、背筋がぞくりとした。
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