first contact
 普段使わない電車に乗り、さっきまで女子大の近くへ行ってきた。
もちろん、合コンという目的があっての行動だ。

合コンに良い出会いはない、とよく言うけれど、そうでもない。
欲や心の隙間を埋めるにはちょうど良い。

楽しければ、それで良し。

大学生活に求めるのは、それで十分だと俺は思う。
現実なんてそんなものだ。


ガタン、と大きく車内が揺れ、立っていたOLがバランスを崩して、ヒールの音を立てた。
終電の車内には、それが少し大きな音に感じられた。

それからすぐに、車内アナウンスが、次の駅の名前を繰り返し読み上げる。

降りる駅名を耳にし、俺は文章を作ろうとしていた手を止め、素早く携帯を閉じた。
ポケットにそれを流し込むと、電車は速度を緩めて、ギギィと煩く音を鳴らした。

窓硝子に映る自分は、春より痩せて、何だか疲れた顔をしている。
すぐに暗い町並みから駅のホームへと景色が変わり、映っていた俺の姿は、掻き消されてしまった。

プシュー、と扉が開くと、数人が電車を降りていく。
夜は、この駅で降りる乗客は少ない。
田舎の大学近くの駅だからだ。
大学生の活動時間外は、ほとんど利用客はいない。

電車を降りると、蒸し暑い空気が肺を蝕んでいった。
「あっつ」と口ずさむ人までいるほど。
初夏はもう過ぎてしまったけれど、これからもっと暑くなるのかと思うと、ぞっとする。
アパートには、エアコンがないのだ。

そう気怠く歩いていると、どうやら人波に乗り遅れていたようで、ここで少しだけ降りた乗客も、ホームにはもう誰も残っていなかった。

夜空の見えるホームから、人工的な光の漏れる階段の方へ、急ごうとしない足を向けた。

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