マンザイ☆ガール

ツカミノハナシ

学校で5時間目の退屈な英語の授業を受けながら、

あたしはまだ昨日の光景に想いを馳せていた。

矢継ぎ早に繰り出される一発ギャグ。

よくそんなに口が廻るわ。って感心するほどのツッコミのマシンガントーク。

20代半ばだっていうのに、おじさんに見えたり、子供に見えたりする演技力。

あたしにとっての初めてのお笑いライブは、
衝撃的過ぎるものだらけで一時間半一息もつけなかった。

本当だよ。

最後の三組位は途中呼吸するのも苦しくなって、
死んじゃうかと思った。

流れ込んで来た色んな情報をあたしはまだインプットできないまま、
昨日の出演者をノートに書き出して、にやけていたらしい。

40過ぎて独身、なんか噂じゃロリコン親父だなんて言われてるメガネの英語教師が、

『俺の授業がそんなに楽しいか?斎藤?』

一切聞いていなかったあたしは、『斎藤』という単語でようやくロリコンメガネザルがあたしに対して話し掛けていると気付いた。

あたしは咄嗟に問題の答えを聞いているのだと思い、
開いていたページの目に入った単語を思わず口走っていた。

『く、クレイジぃ?』

メガネザルは眉をピクリともさせず

『誰がだ?おい』

クラスは笑いに包まれる。

数秒後、メガネザルは何事もなかったように、アメリカの孝行少年の逸話をもう一度説明しだした。

192ページ。

変わらない日常。
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