あなたじゃなきゃダメ...

そんな話をしてそろそろ

帰ろうと思って車を降りた。

つぐも一緒に降りてきたけど

そんなに気にせず

後部座席の荷物を取ろうとした。

すると私の後ろから

「最後にお願い聞いて?

抱きしめさせて」

弱々しいつぐの声が聞こえた。

振り返ると私が返事をする前に

つぐに抱きしめられた。

つぐの大きくて頼もしい腕の中。

でも少し小さく感じた。

「ごめんな。

ありがとう。」

そう言って私を離し

車に戻って去っていった。



つぐ...

どうして抱きしめたりするの?

そんな事したら忘れられなくなるよ。

私は弱い人間なんだよ?

つぐが真剣に悩んでいる間に

違う人に身を委ねて

寂しさを紛らわせていたんだよ。

一途だった私は今は居ないよ。

もう戻れないよ…
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